1限目
「経済のグローバリゼーション」は、どのような経緯で進展してきたのでしょうか。
これについては、1929年から数年にわたって、多くの国々に影響を及ぼした世界恐慌について触れてれておかなければならないでしょう。この出来事が、その後の第二次世界大戦、そして戦後の国際経済のあり方に大きな影響を与えたからです。
恐慌当時、アメリカやイギリスなどの大国は、自国の経済を守るために排他的な政策を行いました。しかしそのことが恐慌の影響をさらに広げ、結果的に第二次世界大戦の一因になったとも考えられています。
そのため、戦後の国際社会は保護主義的な政策を抑制し、自由貿易を推進することで経済の安定化を図ろうとしました。それが平和維持につながると考えたからです。
そのために、為替の安定化や財政支援を行うIMF(国際通貨基金)と、戦争被害が大きかった西ヨーロッパへの復興投資を促進する世界銀行が設立され、さらに貿易に関する協定としてGATT(関税・貿易に関する一般協定)が締結されました。
GATTは発足以来、関税など貿易にかかわる障壁を取り除き、国際貿易を推進する役割を担ってきましたが、その後さらに機能を強化したWTO(世界貿易機関)へと発展しました。
こうして「経済のグローバリゼーション」推進の基盤づくりが進められ、世界のほとんどの国々に住む人々は、好むと好まざるにかかわらず、「経済のグローバリゼーション」という大きな流れの影響を受けるようになってきたのです。
2限目
自由貿易とは、制限のない自由な貿易ということですが、貿易上の制限といってもいろいろなものがあります。
まず代表的なものとして、国境を通過する際にかけられる「関税」があります。そして、数量制限などの規制措置や検疫措置(農薬の有無や病気や安全性に関するものなど対する規制)など、関税以外のものを「非関税措置」といいます。国ごとに違う規格なども規制の一種になります。品質表示の基準や、あるいはコンセントの形が違うというものも一種の規制ということができるでしょう。というのも、例えばコンセントの形が違うと、その形のものしか使えなくなるからです。
これまでの自由貿易の進め方は、まず関税以外の規制を全て関税に置き換え、次に関税を下げる交渉をすることでした。そして、関税が下がった後は、規格統一への議論をはじめ、非関税措置の撤廃が議論されてきています。
自由貿易への協議はもともと、国境の関税規制をなくし、貿易を促進させるということが主目的となっていましたが、ウルグアイラウンド(1986年9月にウルグアイで開催されたGATTの「多角的貿易交渉」のこと)以降、農産物等に関する補助金の問題も議論されるようになりました。
3限目
WTO(World Trade Organization /世界貿易機関)は、GATTのウルグアイラウンドでの合意を受け、1995年1月に発足した国際機関です。
WTOは、GATTから引き継いだ協定も含め、貿易上の多くのルールを集めた存在であり、また自由貿易促進のための新たなルールづくりも担っています。さらに、そのルールが守られるよう各国に働きかけを行ない、ルールが守られない場合には裁定も行います。
WTO加盟国同士は、一定の関税率を定めて同一条件で貿易を行い、それ以外の国に対しては、自由に関税を決めることができます。つまり加盟国以外には高い関税をかけて、加盟国と区別しているのです。WTOの枠組みは、メンバーかメンバーでないかの差があるだけで、加盟国ならば同じ条件で貿易が行われるのが通常です。ただし例外措置として、WTO加盟国でも経済力の弱い国に対しては、優遇措置も行なわれています。
WTOへの加盟は、WTOが要求する法整備を行なった上で、加盟国が了承すれば希望する国が加盟することができます。現在の加盟国は、148カ国(2004年11月現在)となっています。
【 WTOの主な問題点 】
1.意思決定のあり方が不透明 大国の意向が優先される。
2.貿易・投資自由化が自己目的化しており、人権確保、環境保全、貧困解決や格差是正、発展問題への配慮が困難になっても、適切な事前アセスメントすら行われていない。
3.輸出国、輸出関連産業の利益拡大が行われるが、輸出に関連しない生産者や輸入競合産業は、補償されることもなく、縮小を余儀なくされるなど、たとえ効率化の利益があっても、不均等にしか分配されず、これを是正なり、調整するメカニズムは限定的。
4.知的所有権保護の徹底が模倣による技術移転を制限するとともに、医療・生命分野でのパテント問題を発生。
FTA(Free Trade Agreement/自由貿易協定)は、2国間または多国間で締結する貿易上の取り決めのことです。加盟国域内の物品の関税及びその他の制限的通商規則やサービス貿易の障壁等の撤廃を内容とする協定のことです。マスコミなどではFTA交渉という言葉が一人歩きしていますが、日本の場合は、実際にはほとんどがEPAとして交渉が行われています。
EPA(Economic Partnership Agreement/経済連携協定)は、FTAの要素を含みつつ、締約国間でヒト、モノ、カネの移動の更なる自由化、円滑化を図るため、国境および国内の規制の撤廃や各種経済制度の調和等を行う協定です。たとえば日本とフィリピンとのEPAでは看護師、介護福祉師の移動が一部規制緩和されることで合意されています。日本はすでにシンガポール、メキシコとEPAを締結しており、フィリピン、タイ、マレーシアとは基本合意に達し、韓国、チリ、インドなどと交渉中です。
世界中では、FTAは122件(2005年1月現在)締結され、どんどんその数は増えています。
これには、WTOが多国間交渉であるために議論がなかなか進まない、交渉が2カ国間の利害だけで国内調整が容易なFTA/EPAを推進しようという背景があります。
しかし、交渉が進展している一方で、その具体的な交渉過程はほとんど公開されていません。情報を公開するように求めても、2カ国間交渉に関するため自国の手の内を見せられないという理由で具体的な情報が明らにされないまま、合意へと進んでいます。
このような「密室」での協議がFTA/EPAのもっとも大きな問題といえます。
ここまで読んでいかがでしたか?
現在日本では「TPP」が協議されています。「TPP」は今までの投資協定よりも、さらに分野が多岐にわたり、非常に多くの人に大きな影響があると云われています。