貧困、格差、雇用、ジェンダー不平等、教育、保健、地球温暖化など、私たちの住む世界には様々な課題が存在しています。 これまで国や地方自治体、市町村レベルで行政や企業、NPO・NGOなど多様な人々が こうした課題を解決しようと努力を続けてきました。 国連では2000年に採択された「ミレニアム宣言」に代表されるように、 貧困を半減させ、世界中の人々が人間らしく生きられる世界の構築に向けた取り組みが進められています。
2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、2030年までに貧困をなくし、 持続可能な社会へと変革することを宣言しています。 その中核となるのが、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals / SDGs)です。 SDGsには分野ごとに17の目標が立てられ、2030年までに世界中で達成されることが求められています。 国連総会に出席し、採択したすべての国連加盟国政府(日本政府も含まれます)に加えて、国際機関、民間企業、 自治体、労働組合、協同組合、市民社会組織など、社会のあらゆるアクターがそれぞれの強みを活かして 目標達成に向けて努力しています。SDGsには貧困、飢餓、教育、保健、ジェンダー、水・衛生、環境など、 ミレニアム開発目標でも取り上げられた課題に加えて、エネルギー、産業、雇用、都市、持続可能な消費と 生産、気候変動、平和と公正など、経済的・社会的な課題も多く含まれているのが特徴です。
日本政府は、2016年5月に総理大臣を本部長とし、全閣僚が参加する「SDGs推進本部」を設置し、 同12月に「SDGs推進実施指針」を発表しました。また、2017年7月の国連会議にて外務大臣がSDGsの進捗状況を発表し、 同12月には「SDGsアクションプラン2018」を発表しています。SDGs推進本部に様々な分野の代表者が意見を伝える 「SDGs推進円卓会議」も設置され、市民社会組織から3名が委員となっていますが、 日本政府の取り組みは市民社会組織を含むあらゆるステークスホルダーとの連携という観点からは不十分です。 例えば、「SDGsアクションプラン2018」では、これまで多くのNGOが提案してきた政策はほとんど盛り込まれていません。
では、なぜ市民社会組織がこの目標達成に関わる必要があるのでしょうか。 貧困や格差、教育、保健など、行政サービスが充実すれば解決する問題なのではないか、と思う人もいるかもしれません。 電気やガスなど民間企業がサービスを行っている分野もあります。もちろん、こうした行政や民間によるサービスが充実して すべての人に行き渡ることが望ましいのですが、それには多くの時間がかかります。 行政や民間では対応できない、すなわち、既存のサービスからこぼれ落ちてしまう人々が存在します。 十分な対価を払えない人々、難民となってしまった人々、差別的な待遇に晒されている人々など、 市民社会組織はこうした人々が取り残されないよう、直接サービスを提供すると同時に、 政府や関係者に働きかけを行うという重要な役割があります。市民社会組織によるSDGsへの提言は様々な形で行われており、 2017年4月には「SDGs市民社会ネットワーク」が設立され、関西でも2017年5月に「関西SDGsプラットフォーム」が設立されました。 その後、関西NGO協議会を中心に、市民社会からSDGsローカルアジェンダを作る、KANSAI−SDGss市民アジェンダの取り組みなども始まっています。
清潔で安全な水と、衛生的なトイレは人々の健康維持や環境にとって大変重要です。 SDGsが目指す世界では2030年までに世界中ですべての人が安全な飲料水そしてトイレなどの衛生設備にアクセスできることを 目標にしています。日本ではほぼすべての地域で上下水道が整備されていますが、施設の老朽化や技術継承などの課題を抱えています。 長期的な視野に立った水道事業の運営や水循環政策が求められています。
生産性の向上、失業率の低下、若年層への職業訓練など、私たちが暮らす上で避けて通れない経済面での課題を扱う目標です。 「ワーキング・プア」という真面目に働いても生活が苦しいと感じる人が増えています。 持続可能な形で経済を維持しつつ、誰もが人間らしく生きるために必要な賃金や雇用を整備することが必要です。
国際NGO「オックスファム」の調査によれば、2017年に世界で新たに生み出された富の82%を世界の最も豊かな1%が手にした一方で、 世界の貧しい半分の37億人が手にした富の割合は1%未満です。人々の間に大きな経済的格差が存在しています。 また、以前から存在する南北格差に加えて、一国内での格差も開きつつあります。 行き過ぎた格差は社会を不安定にします。日本社会に存在する格差を解消するためにはどのような政策が必要でしょうか。
レストランで食べ残された料理を見かけない日は残念ながらありません。 私たちが普段食べている野菜や果物、飲んでいる水、着ているTシャツやジーンズ、使っている電気やエネルギーは どこでつくられているのでしょうか。 生産者と消費者が離れてしまいがちな現代だからこそ、生産にも消費にも責任を持つ必要があります。
誰もが自由に意見を発し、行動できることは民主主義社会の前提条件です。 でも、政府によって情報が隠されたら?重要な貿易交渉の中身が見えないまま秘密裏に決められているとしたら? 情報へのアクセスは私たちが考え、行動するために必要不可欠です。 AMネットでは2011年からTPP交渉の情報公開を求めて政府と市民の対話を進めています。
SDGsはそれぞれの目標は独立していますが、相互に関係しており、目標全体として達成することが肝心です。 例えば、気候変動の目標(ゴール13)を達成するために、原子力発電所を増設するという政策は、 住民の受ける健康リスクや事業の採算性という観点からは不適当だと言えます。 また、飢餓をなくすために食糧援助のみを増加させ、現地のマーケットや食料生産能力が育たなければ持続可能ではありません。 このように、様々な目標の関連性を考えながら、SDGsを総体として取り組む必要があるのです。
【参考】
SDGs市民社会ネットワーク
関西SDGsプラットフォーム
国連 Sustainable Development Goals
https://www.un.org/sustainabledevelopment/
https://sustainabledevelopment.un.org/
国際連合広報センター 持続可能な開発 2030アジェンダ
KANSAI−SDGs市民アジェンダ