2016.04.08

水と人権

2016年2月3日、吉村市長が全国初の水道民営化条例案を再提出すると、マスコミ報道されました。2月16日、吉村大阪市長は、議案を市会に提出し、大阪市水道民営化への議論が再び始まりました。
議案提出を受け、私たち大阪の市民4団体は、急きょ陳情書をネット上で公開しました。広く市民に賛同署名を呼びかけ、約10日間で311筆もの自筆署名をいただくことができました。その陳情書をもって、日程調整できた会派市議(自民・公明)と面談し、私たちの懸念を直接伝えることができました。また、翔の会さんによる平松元大阪市長との水道民営化をテーマとする対談動画を収録いただき、ネットで公開されました。
3月8日、大阪市会に陳情書を提出するとともに、私たちで、市政記者クラブで記者会見を実施しました(MBS、読売等約10社参加)。

私たちの陳情の主な内容

  • 長期的視点が必要な水道事業は、問題・課題分析から始めるべき。「民間資金の活用」という、解決策から議論を始めるべきではない。
  • 現在のインフラ投資は、世界的に年金基金などの機関投資家。事業開始後3〜5年で運営会社の株の売却検討とあるが、いったん売却された株は制御不可能。水道事業の持続性に興味がない投資家が、主要株主となる懸念。
  • 災害時の対応はどうなるか。民間会社と自治体の連携は前例がなく、同様の対応が困難ではないか。
  • 各国事例から見ても、民営化後、運営会社からの水道料金改定要求を断ることは困難。料金高騰の懸念。
  • 世界では民営化が失敗だったと「再公営化」が進んでいる。しかし、再公営化も簡単ではない。TPP等貿易協定のISD条項で巨額の賠償金支払いを命じられる懸念。
  • 新興国での水ビジネスは、ODA等の公金投入がなければリスクが大きく成功しない懸念。

大まかに言えば、私たちの陳情書の内容はこれらを考慮した、市会での慎重審議と現状分析の要請です。 ※陳情書の内容及び記者会見報告はこちらを参照

市会での議論とこれから

その後の大阪市会 交通水道委員会では、おおさか維新の会 杉山市議は、私たちの陳情と翔の会動画の内容を、ほぼなぞる形で反論の質疑がされました。
一例をあげると、私たちの言うパリ市やベルリン市の「再公営化」について、「市の直営じゃない。大阪市も同じ市100%出資会社が運営するのだから、このプランも世界のトレンドだ」旨、主張されました。
私たちは、民営化の失敗を反省し、公の関与を強めて、100%市出資まで戻してきた海外事例を総称して「再公営化」と呼んでいます。それは水を「営利企業から、市民の手に取り戻す」ことであり、世界の潮流だと主張しています。大阪市水道は公営であり、すでに「市民の財産」として「市民の手」にあります。
自民・公明・共産の市議は、面談・陳情内容と近い方向性で質疑いただくことができました。今委員会は地下鉄・バス民営化が中心議題であり十分な審議時間はありませんでしたが、維新以外は慎重にすべきという主張でした。
3月議会の結果、議案は継続審査となり、今後も議論が続きます。私たちの陳情書は「不採択」の結果となりました(お維・自民が不採択、公明が引き続き審査、共産が採択)。
水道民営化のピークは90年代であり、四半世紀前に流行しました。20〜30年の契約がようやく切れ「民営化は失敗だった」と、再度公営に戻し「新たな公共の可能性」を探っているのが、世界の最新トレンドです。
大阪市が「民営化」に寄り道することなく、「新たな公共の可能性」を考える動きは今後も継続します。そのためにも、私たちだけではまだまだ力が足りません。どうかあなたの力を貸してください。
私たちも勉強しながら、活動しています。ぜひ、一緒にできることから始めませんか?

2016.04/文責:NPO法人 AMネット