AMネット理事でもある、著者の平賀緑さんから新著の紹介文をいただきました!

【新刊書ご案内】
平賀緑『食べものから学ぶ現代社会 私たちを動かす資本主義のカラクリ』(岩波ジュニア新書 980) 
https://www.iwanami.co.jp/book/b638607.html

紹介_平賀緑『食べものから学ぶ現代社会 私たちを動かす資本主義のカラクリ』(



自由貿易や自由市場の「自由」とは、大企業が望むものを生産し、望む所へ進出し、望むところから輸入する自由であり、大企業が都合の良い所へ利益を貯め込みつつ、環境と健康の膨大な負担を社会に押し付ける自由であるとは、AMネットの会員なら納得だろう。

しかし、これだけ貿易協定に多国籍企業が介入し、市場を寡占する大企業と個人経営店との力の差があからさまな現代においても、経済学の教科書では、比較優位で貿易が説明され、需要と供給の法則で市場が説明されている。

教科書だけでなく、ふだん耳にするニュース報道や企業や政治家の発言には、消費者が望むから、需要が不足しているから/供給が不足しているから、金融は「大きすぎて潰せない」、経済成長は必須という言い訳が多い気がする。

2021年に出版した『食べものから学ぶ世界史 人も自然も壊さない経済とは?』(岩波ジュニア新書 937)の続編として、今年1月に『食べものから学ぶ現代社会 私たちを動かす資本主義のカラクリ』(岩波ジュニア新書 980)を出版した。

食べものから、現代社会のグローバル化、巨大企業、金融化、技術革新を読み解いてみたら、思いがけず経済学の理論(セオリー)にケンカ売ってるのか!的な本になった。

こんな内容を中高生向けの「ジュニア」新書に書いたら、さっそくあるレビューサイトで「文体だけはジュニア向けですが、内容の量と濃さは普通の新書レベルだと思います」との感想をいただいた。じつは多様な社会問題に取り組む市民社会の大人向けに「現代資本主義経済のガイドブック」を目指したので、嬉しかった。

経済学には、自然を無限にあって当たり前な「所与」と捉えていたとか、日々の生活を支えている多くの無償労働や利他的な行動を無視していたとか、リアルな生活現場からはビックリ!な前提設定がじつは多い。

これほど、生きるために必要な領域を無視して使い捨てる設定で「経済」を語っていたのかと驚かされる。だからこそ、今ごろになって「コモン」や「共」など、経済学が無視してきた領域を見直そうとの動きも始まっている。

人も自然も壊さない経済を考えるためにも、まずは現在資本主義経済のカラクリを、食べものから、ぜひ「ジュニア新書」でサクッと読んでみてください。(by平賀緑)


【目次抜粋】
はじめに
  今の世の中、なんで??……と思ったら
  食べものから現代社会を考える

序章 資本主義経済のロジックを考える?セオリーとリアルのズレ
1章 小麦を「主食」にした政治経済の歴史
2章 現代社会のグローバル化?「比較優位」とは思えないモノカネの動き
3章 現代社会の巨大企業?「完全競争市場」なんてどこに?
4章 現代社会の「金融化」?「潤滑油」というよりギャンブラー
5章 現代社会の技術革新とデジタル化?イノベーションで世界を救う?

おわりに
 現在の経済学の課題は、成長より「格差」
 資本主義経済が削ってきたもの
 小さく、分散して、自主的に動き始める