日本以外の動向 昨年12月にニュージーランドのオークランドで開かれたTPPの第15回会合で前回会合で、正式に交渉参加が決まったメキシコとカナダを加えた11カ国での協議が行われました。この会合でも農業分野を巡る関税撤廃や、企業側に有利な医薬品の知的財産権財保護の強化、さらに投資家と国家の紛争解決(ISDS)条項などで各国の隔たりは埋まらなかったものの、2013年中での交渉妥結をめざす方針で一致したとの共同声明が出されました。

TPPを巡っては、昨年11月に再選したオバマ米大統領をはじめ、一部の交渉参加国首脳がすでに2013年中での妥結をめざす方針を表明していましたが、15回会合でも大きな進展は見出せなかったというのが実情です。11カ国に膨らんだ多国間交渉、しかも原則的に例外を認めない関税撤廃など強硬な姿勢の下で展開されるこのTPP交渉で、果たして各国の利害調整がつくのか、多国間交渉が難しいのは、すでにWTO(世界貿易機関)でも実証済みです。そもそも、それほどまでして手に入れようとしている自由貿易の果実は、いったい誰にどのような恩恵を与えてきたと言えるのでしょうか。むしろ、社会的に様々な負の側面が指摘されているのが今日の自由貿易であり、経済のグローバル化です。 


TPP オバマ大統領

米国と欧州連合(EU)が米欧自由貿易協定(FTA)の交渉開始すると2月13日に発表しました。米国では本来、通商交渉権限は議会にあり、貿易促進権限(TPA)を議会から委任されることにより、米国政府・米国代表通商部(USTR)が権限を持ちますが、すでにTPAは失効しています。オバマ政権はTPA成立のメドも権限もない中で交渉を行っており、交渉妥結したとしても、議会の承認を得ることは困難であり、批准できるか危うい状況は変わっていません。
2月12日、オバマ大統領が一般教書演説でTPP交渉を本年度中に完了させると表明しました。もしTPP交渉を今年中に完了するならば、5〜10月会合が山場となってきます。5月以降の会合に参加するには2月の訪米時に表明しなければ間に合わない、ということになり、2月21日又は22日に予定されている日米首脳会談はまさにそのタイミングで開催されることになります。会談での表明はないとされていますが日本の財界が強く要望していることでもあり、その後TPP交渉参加の是非についての動きが活発化する可能性があります。

 

引き続き、動向を注視

選挙ポスター

12年選挙ポスターでは反対と

安倍首相はTPPについて、「例外なき関税撤廃なら参加しない」と明言しています。しかし、国民皆保険や郵政民営化など多方面に影響を及ぼす非関税障壁やISDS条項など、むしろ社会全体にとって危険性の高い問題については明言していません。自民党内でも推進派による「環太平洋経済連携に関する勉強会」(川口順子、中村博彦共同代表)は35人出席、反対派である「TPP参加の即時撤回を求める会」(森山裕会長)は233人と反対派が多数である中、高市早苗政調会長が「交渉に参加するかどうかは政府に権限がある」と発言するなど、先行きは不透明です。また、TPPは事前協議の段階で交渉参加をしていませんが、今春日本とEUは経済連携協定(EPA)交渉に入る予定で、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉もスタート予定です。これまでTPP反対で一致している活動も日中韓FTAやRCEPでは評価が割れ、今後の国内議論も注視する必要があります。


STOP TPP 官邸前アクション

市民側の動きでは、毎月第一火曜日に開催されている首相官邸前でTPP交渉参加反対に向けたデモが2月5日にも「STOP TPP!!官邸前アクション実行委員会」により行われました。AMネットでは、引き続き政府側との意見交換会の実施に向けた取り組みを行っていますが、政権交代以降、TPPに関する新政権の方針が未だに明確になっておらず2月開催で進めてきた神戸意見交換会は順延され、今後の意見交換会の実施についても保留となっています。
TPP交渉の次回第16回会合は、3月はじめにシンガポールで行われる予定であり、参加国間の協議はどうなるのか、そして新政権はTPPに対してどのような姿勢で臨むのか、引き続きその動向を注視していく必要があります。

2013.02/報告 : 若間 泰徳
(NPO法人 AMネット)

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