2020.02
私たちの生活とSDGs
エシカル消費 〜世界の現状と課題、
SDGs実現のために私たちができること〜
『LIM第93号』(2019年11月発行)より抜粋
少人数で飲みながら食べながら、ざっくばらんに話しながら、こじんまり参加型のイベント「ジケイジ寺カフェ」。
今話題の「エシカル消費」について、小吹岳志さん(日本フェアトレード・フォーラム理事・消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク幹事)から伺ったお話を
AMネットのスタッフが報告します。
エシカル消費で世界が変わる?!
「エシカル」とは?
「エシカル」とは、「倫理的な」を意味する英語ethicalのこと。
地球環境、人権、動物の福祉などに配慮して作られた商品を「エシカル商品」、そのような商品を選んで買うことを「エシカル消費」と言うそうです。
「もったいない」がエシカル消費?
小吹さんからの最初の説明は、「もったいない」というのもエシカル消費の大きな要素ということでした。
要するに、もったいないと感じて、買うこと、使うこと、捨てることまでを大事に考えることがエシカル消費に繋がる、とのこと。
その説明として、日本人の消費生活が世界とどう結びついているかを理解するためにクイズが出されました。
その中のいくつかをご紹介すると…
Q.日本の食料自給率は? A.約40%
Q.日本の残飯率は? A.約30%
Q.アフリカでは何人に一人の子供が児童労働をしている? A.約5人に一人
先進国の中でも、とりわけ食料自給率の低い日本。それなのに世界の食料援助量の約二倍を日本だけで捨てている、というのだから驚きです。
衣料に関しても、1年間に購入される総量と同じくらいの量を廃棄している、大量消費大量廃棄の日本。
しかし安いものを求め、すぐに捨てて、また安いものを買う、という社会の裏で、
低賃金・厳しい条件で働かされ、犠牲になっている人たちがたくさんいます。
児童労働の問題も深刻です。人件費抑制のため、一番安い労働力として、子どもを買い集める奴隷仲介人もいるとのことです。
世界の子どもたちの実に10人に一人が児童労働と呼ばれる状況にある、と聞くと胸が痛みます。
安価なものを求めすぎる社会は、人間だけでなく、環境に与える影響も大きいです。
日本は国土に占める森林の割合が約70%であるのに、コストが高いという理由で木材自給率は戦後どんどん下り、
東南アジアなどの安価な木材を輸入するため広範囲に木が伐採され、水環境の悪化により原産地では洪水や渇水が起きるなど、
大きな問題となっています。
SDGsとエシカル消費
SDGs…国連が定めた2030年までに達成すべき17の持続可能な開発目標のひとつ、
「目標12:つくる責任つかう責任」がまさにエシカル消費を指していると言えます。
消費者が責任と自覚を持って、世界の課題を変えていく、というこの目標ですが、
私たちの消費活動が飢餓や貧困、健康、格差などの問題解決に繋がるということを示しています。
どんな商品やサービスがエシカルか、というと例えば…
・環境汚染や二酸化炭素排出に気を遣っているか
・生産者の人権や労働環境に配慮しているか
・動物実験や工場型畜産を行なっていないか(アニマルウェルフェアを考慮しているか)
・反社会的な方法で利益を得ていないか
など、様々なポイントがあり、網羅しているポイントが多ければ多いほど、エシカル度の高い商品やサービス、と言えそうです。
その商品のエシカル度は?
2回目のクイズは、日常生活で見かける商品のエシカル度を考えてみましょう、というもの。
点数をつける対象の商品として、パタゴニアのフリース、ユニクロのTシャツ、ダイソーの茶碗、割り箸…などが挙げられました。
答え合わせのポイントとして…
・パタゴニアはオーガニック、フェアトレード製品を作り、環境や人権に配慮した会社で、社員の働き方などにも心を配っている。
・ユニクロに代表されるような、短い期間でどんどん変わるファストファッションは、
最近では改善されているという情報もあるが、短い納期とコスト削減で生産者に負担を強いている。
・100円ショップの値段を支えているのは低賃金で働く人々。
・割り箸は98%が輸入品で、1年間に約250億膳も消費されている…
ここでも気づかされるのは、様々な視点から「エシカル消費」を考える必要があるということ。
そして消費者側の、「この商品、エシカル?」と常にアンテナを張りながら、
その商品や販売している企業について知ろうとする態度が重要だと思いました。
その具体例として、世界最大の食品・飲料会社であるネスレは、イギリスとアイルランドでは
フェアトレード認証を取った商品を販売しているが、日本では取っていない。
消費者の意識が高くNGO団体などからの圧力が強い地域では、企業はそれに合わせた商品を販売しようとし、
そうでない地域ではそれを考慮しないということを聞くと、日本でも消費者の意識、企業への態度を変えていくことが、
よりエシカルな商品を届けてもらうことに繋がり、さらに世界的な問題解決に繋がっていくのだと感じました。
エシカル消費への取り組み
2016年に「買い物は投票!」を合言葉に立ち上げられた「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」では、
「企業のエシカル通信簿」という、社会の課題に真摯に取り組んでいる企業を調査し、評価しています。
また「ぐりちょGreen&Ethical Choices」という、どんな商品がエシカルで、どこで売っているのかを
スマホで簡単に見つけられる情報サイトも作り、企業のエシカル度を高め、消費者へエシカル消費を促す取り組みをしています。
さらに、人権や環境に配慮した商品であることを証明する様々な認証ラベルも紹介されました。
認証ラベルは、企業側のエシカルな商品づくりのためのツールであると同時に、消費者側の判断材料にもなります。
消費者としては、その商品を手に取った時に、その商品について瞬時に判断できるという意味でとても有効だと思うので、
買い物をするときに認証ラベルがあるか、どんな種類のラベルかを意識して、それを生かしていけたらと思います。
おわりに
私たちの消費生活が世界の大きな問題と密接に関わっていると知り、その責任を感じて申し訳ない気持ちにもなりましたが、
逆に考えれば、ほとんどの人が日々行なっている「消費」という行為で、世界を変えていける可能性もあるのだと気づきました。
「何を買うか」でどんな世界を作っていくかの選択をしている、ということを忘れずに、より良い商品を選び、
さらに一歩進んで企業への働きかけまで行う。そんな人が増えていけば世界は確実に変わっていくだろうし、
「エシカル消費」をもっともっと広めていきたいです。
2019.11/報告 : 山本 瑛子
(NPO法人 AMネット)