流域を歩く(安威川編) 安威川を歩く昨年から始まった、街あるきのフィールドワーク・イベント。今年は淀川の『流域』に焦点を絞り、3月の大川に続き、5〜7月に安威川の流域を歩くイベントを行いました。『流域を歩く(安威川編)』は、<講座編>と<現地編>の2つから構成されます。 まずは5月の講座編で流域全般や流域マップの基本を学び、7月の現地編で安威川中上流域を実際に歩きました。その結果、参加者の様々な視点から得た情報をもとに作られた地図が、こちらの安威川流域マップ(pdfファイル)です。

『流域』に着目する理由は何か? それは、『流域』が、これからの循環型社会を考えるうえで重要なキーワードだと考えるからです。昔からアジア・モンスーン地帯では、『流域』を「地域」の単位として考えてきました。生活用水はもちろんのこと、水運・舟運によるヒト・モノ・文化の密接なつながり、利水・治水の必要性、水循環による固有の生態系、など、流域を中心にした「地域社会」でヒト・モノ・文化が循環し、豊かな地域社会が作られてきました。


安威川を歩く

ところが、その『流域』は大きく変容してきています。グローバル化の流れによって林業が衰退し、上流域の森林は緑のダムの役割が果たせなくなり、山崩れが頻発するようになりました。農業では、海外からの食料の流入や食生活の変化でコメの消費量が減り、耕作放棄田が拡大しました。緑のダムと呼ばれる水田が減ると、水循環機能が悪化し洪水や渇水が起こる可能性があります。さらにグローバルな観点で見れば、自給率が下がり途上国の食糧を輸入することで、知らないうちに途上国の経済に悪影響を及ぼしています。


安威川を歩く

これまでの経済至上主義で本当に幸せなのか、経済のグローバル化が進むことで、地域の実態が崩れ、国家、地域、階層間の格差は増大してきました。グローバル化の方向と異なる、穏やかで身の丈に合った真に豊かな社会、そういう地域社会をめざしたい。『流域』を地域単位として考えることは、真に豊かな循環型社会を作るための重要なキーだと思います。


安威川を歩く

今回は、安威川の中上流域を、一日かけてめぐりました。そこから見えてきたものは? 実際に見た上流域では荒廃した杉林、そのすぐ近くには、対照的といえる手入れされた林の美しさも見ることができました。突然立ち寄ったのに親切に対応してくださった京都の木材や無添加住宅を扱う製材所、江戸時代から脈々と受け継がれ今でも利用されている棚田の水路、山奥にあった心学の祖の生家、上流の多くの砂利採石場、ダム建設による代替地農業、中流域の水田を潤してきた井堰、などなど。


安威川を歩く

同じ場所を巡ったにもかかわらず、参加者各人の視点の多様さは驚くばかりで、各々が書き出したコメントを地図の上にまとめ上げると、世界にたった一つのすばらしい流域マップが作成できました。
このマップには、現地で写真を撮りコメントを付けてWeb上の地図に登録できるAQMAPというシステムも利用されています。 この体験をもっと広く! 多くの人が、身近なさまざまな川の流域を歩き、個人のあるいは仲間同士の流域マップを作る。そういう活動の中から、真に豊かな社会を考えていきたいと思います。

2014.08/報告 : 渡里祐子・原田智子
(NPO法人 AMネット)