2014.05

水と人権

民営化でどうなる?!私たちの『みず』
〜再公営化が世界の潮流〜

『 LIM第71号 』 (2014年05月発行)

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※当日の講演は、IWJ Independent Web Journal 下記アドレスで動画音声が配信されております。(約3時間)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/125379


現在、契約更新を機に水道事業を民営から公営へ戻す動きが世界中で広まっています。「再公営化」した国や自治体は、過去5年間でフランス・パリ市やドイツ・ベルリン市など86を超えています。大都市だけでなく地方自治体にも広がっており、まさに「再公営化は世界の潮流」となりつつあります。一方、大阪市では2013年12月に「民営化検討素案」が出されました。
時代に逆行するとも言える大阪市の水道民営化検討に問題提起するため、2014年2月15日にグランキューブ大阪で開かれた「民営化でどうなる?!私たちの『みず』〜再公営化が世界の潮流〜」にAMネットも主催団体として参加しました。以下に概要を報告します。

 

第1部 基調講演「大阪の水の未来を考える」
橋本淳司氏(水ジャーナリスト)
これから長期的な人口減少、施設の縮小と施設更新が起きてくる。今後コストは上がっていくが、負担する人口は減少する。事業環境は変わらないのに、民間企業が運営すればコストが下がるというのは楽観的すぎないか。民間企業が利益追求のために、予算を削って経営を良くしても、更新・修繕しないと水道はぼろぼろになってしまう。水道は長期投資を基本にするべきだが、短期的な利益を求められる民間企業はそもそも長期的な投資に不向きだ。

水民営化

民営化して水ビジネスで海外進出して稼ぐというが、水道事業単体で海外進出して利益を上げようとする企業はほとんどなく、他の事業とセットされている。それは水道単体ではさほど利益が見込めないからだ。

地方は課題先進地。市民が自主管理する小規模給水施設などが始まっている。トップランナーは大阪や東京ではなく、地方にいる。水源保全を大切にし、浄水にかかる莫大なエネルギーを削っていく。水道は代替できない。持続可能な水道のために、飲める水に感謝しながら、未来志向で50年先の課題解決を考えたい。

 

第2部 シンポジウム 新里嘉孝氏は所属する「おお川水辺クラブ」のスローガン「川で学び・つながる」を紹介、川とふれあうことで人が集まり、大阪市などの下流だけでなく川全体へ思いが広がっていく。流域単位で考えることが大切だと訴えました。

中村寿夫氏(水政策研究所理事長)は大阪市水道事業民営化の検討素案や、「民営化による市民のメリットが不明だと大阪市議会では慎重な立場が多数だ」と市議会での議論などを紹介しました。

水民営化

AMネット理事の堀内葵からは「1990年代のアジア・ラテンアメリカなどの民営化は世界銀行などに条件づけられたもので、市民が望んだわけではない。
すでに民営化でのマイナス事例が多く報告される中、再び公営に戻す動きが加速している。公営事業体間や市民との協力関係も構築され始めている。」と国際的な動きを紹介しました。

神田浩史氏(西濃環境NPOネットワーク副会長)は、「水道のような公共性の高い政策ほど時間をかける必要がある。誰が決めるべきか。私営化の賛否だけでなく、政策立案の初期段階から情報公開と市民参加を担保し、市民と行政が協働して多様な選択肢を検討すべきだ」「TPPのISD条項が成立すれば、水道民営化が問題だと後からわかっても、パリ市のように公営に戻すことすら困難になる」と、公共政策と市民参加のあり方などの問題提起がありました。

今回500人もの方々に参加いただき、会場は熱気にあふれました。現在、大阪市水道局による「水道事業民営化に関するパブリック・コメント」が実施されています(2014年5月30日終了)。
AMネットの主張もブログに掲載しました。ぜひご一読いただき、一人でも多くの方が意見提出くださると幸いです。
※詳細はAMネットブログをご参照ください。
http://am-net.seesaa.net/article/396299519.html

2014.05/報告 : 武田かおり
(NPO法人 AMネット)