グローバル経済の縮図を国内にもたらす特区や農業改革

『LIM第73号』(2014年11月発行)より抜粋

大規模農業

2014年、6つの区域が国家戦略特区に決まり、うち農業に関連する特区は、兵庫県養父市と新潟県新潟市の2つで、特に「農地の有効活用」が大きなテーマとなっています。「農地の流動性」を高め耕作放棄地の活用や農地の集約化を目指し、「農地の転用」では農家直営のレストランを作る計画などが進んでいます。


農水省 中間管理機構

実は、こうした農業関連の規制緩和や制度変更の動きは、特区に限らず、現在日本全体に大きな農業改革の波が押し寄せています。 政府による「減反政策の廃止」をはじめ、「農地中間管理機構」いわゆる農地バンクの設立、特区の養父市以外でも「農業委員会の自治体への権限移譲」が進められているところもあります。その他「農業生産法人の要件緩和」や大がかりな「農協改革」など様々に進められています。

こうした変化に呼応し、いくつか動きが出ています。つい最近も流通大手イオンが、農地バンクを利用し、2015年から本格的に米の生産を始めるというニュースがありました。今年は米価の下落が著しく、稲作中心の農家は大変厳しい状況です。今後も「減反政策の廃止」に加え、「大規模農業の促進」「農業への企業参入」が進めば、多くの小規模農家はさらに厳しい状況となります。

農業は食糧生産のためのものであり、農家はその担い手というイメージはすぐ湧きます。しかし実際現場に行くと、単に農業を担うだけでなく、その地域に暮らす、重要な地域の担い手であることが見えてきます。 しかし、今日の農業改革には、そうした地域での暮らしが配慮されているようには思えません。それは、特区や規制緩和を推進するメンバー構成を見ても明らかです。 政府が推進する「農業の6次産業化」は「農産物の生産・加工・販売を一体化させることで地域の活力とし、収益を上げていこう」というものです。しかし、そのためのノウハウや資金を果たしてどれだけの地域が持っているでしょうか。多くの場合、地域の外から持ってくる、企業進出を呼び込まねばならないのが、実際のところでしょう。

養父市の農業の6次産業化の計画書を見ると、 「市内で生産された農産物を用いた農家レストランを設置する。@(有)新鮮組、Aやぶパートナーズ(株)とオリックス不動産(株)が市内農業者と連携して、市内で生産された農産物を用いた農家レストランを設置する」と書かれています。また、同市の特区構想の概要書には、イオンの系列会社であるイオンアグリ創造、あるいは近畿クボタなどが同地域内での農業生産法人設立を検討、と記載されています。


農水省 中間管理機構

地域外資本を呼び込み、地域を活性化させるというのは、「海外から投資や企業を呼び込み、経済成長を図る」という国家戦略特区の構造と全く同じです。投資を呼び込む側よりも「投資する側」がより有利で、より確実に利益を上げていくというのが現実ではないでしょうか。

アメリカは、金融業や投資活動、知的財産権などで大きな利益を上げています。日本も貿易赤字が続いていますが、それでも最終的な経常収支は多少なりとも黒字です。それは「海外投資による所得」が貿易赤字以上に黒字だからです。

実際に働く人より、資金やノウハウを持つ人が優位に立ち、大きな利益を上げていく、このようなグローバル経済の縮図を国内に再生産するのが、昨今の特区構想であり農業改革なのです。

2014.11/報告 : 若間 泰徳
(NPO法人 AMネット)

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