アベノミクスと国家戦略特区のゆくえ

『LIM第70号』(2014年02月発行)

国家戦略特区

特区法成立、今後のカギを握る特区諮問会議 世界一ビジネスのしやすい環境を作ることを目的とした「国家戦略特区」を創設するための法律「国家戦略特別区域法」が、昨年12月の国会で成立しました。
この特区法では、
・総理大臣を議長とする「国家戦略特区諮問会議」を内閣府に設置すること
・特区ごとに「国家戦略特区会議」を設け、新たに任命される特区担当大臣と関係自治体の長、それに民間事業者の三者が、特区の具体的な事業計画を作成すること
などが盛り込まれています。

現在、数多くの自治体や企業、団体から提出されている特区案の中から、どの地域、どの案を正式に特区として認定するか、それを決めるのが「国家戦略特区諮問会議」です。

元々、この国家戦略特区の構想をまとめたのは、少数の国会議員と企業家など民間議員によって構成された「産業競争力会議」です。

NHKより

そして、この特区構想をまとめるに当たり、産業競争力会議で中心的役割を果たしてきた竹中平蔵氏は、この特区諮問会議でも民間議員として選ばれています。“成長戦略の1丁目1番地は規制改革である”と主張する竹中氏が、最終的に特区を選出する諮問会議のメンバーになったことで、この特区構想の性質が一貫して規制緩和に向けられたものであることがより明確となりました。

規制の全てが正しいと言うつもりはありませんが、社会全体に大きな影響を及ぼす規制改革や制度改革が、一部の国会議員や民間議員(多くは企業家)で決められ、進められていくことには、批判的な目を向けざるを得ません。

これまでの世界的な貿易自由化、規制緩和、そして民営化の流れが社会全体に影響を及ぼし、格差や貧困、そして労働環境の悪化や自然破壊にも結びついてきたことはすでに多くの識者が指摘しています。そうしたことを招く政策や政策立案に至るプロセスについてAMネットでも問題点を明確にし、批判を行ってきました。

国家戦略特区については、今年の1月末に具体的に数カ所が決定すると言われていました。しかし、1月を過ぎてもその決定はなされておらず、その中身についてもまだまだよく分からない点が多いというのが実情です。

 

バランスを欠いたいびつな成長の先にあるもの こうした中、AMネットでは1月24日、特区について考える集いを開催し、参加者で情報交換や意見交換を行いました。この集いで浮かび上がってきたこと、それはアベノミクスや特区構想が、決して社会全体を照らすものではない、と言うことでした。 例えば、すでに実施されているアベノミクス第一の矢「大胆な金融緩和」により、円安となったことで輸出企業は、業績回復が見られます。しかし、その一方で、輸入原材料が値上がりし、その影響で国内メーカーの中には経営悪化に追い込まれているところも出てきています。

あるいは、第二の矢「機動的な財政出動」においても、国土強靱化計画による防災工事やインフラ整備に加え、東京オリンピックに向けた公共投資が進むのは明白です。ただでさえ、建設資材の高騰や建設要員の不足が問題となっている中で、震災復興は後回しとなり、これまで以上に停滞する恐れがあります。 先の都知事選でも一大電力消費地である東京都民の最大の関心事は、マスコミの世論調査では「景気・雇用」あるいは「医療・福祉」といったものであり、原発問題はそれ以上にはならなかった。そしてオリンピック景気に期待する東京都。地方と都市はすでに“つながり”を喪失しつつあります。

アベノミクス第三の矢「成長戦略」の目玉である特区構想においても、地方からは“都市優先”との懸念の声が挙がっています。また、特区で問題視されている雇用に関する規制緩和も、雇用する側の企業にとっては、プラスとなるかも知れませんが、働く側にとっては、年越し派遣村の例を見るまでもなく、不安定な雇用が広がり、労働条件の悪化につながりかねないものです。

アベノミクスや特区は、今日の経済のグローバル化と同様に、一部には有利に働くものの、他方にはマイナスの影響を及ぼす、しかもそれを社会全体でどう調整していくのか、その制度設計が見えないままに進んでいます。それは、分断され、つながりを見失った社会、さらに人間性の喪失や社会そのものの崩壊への道に思えてなりません。

2014.02/報告 :若間 泰徳
(NPO法人 AMネット)

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