AMネット学習会 カフェで読み解く社会のしくみ Vol.3 報告
おカネってなに?

『 LIM第65号 』(2012年11月発行)

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連続学習会「カフェで読み解く社会のしくみ」第3回は「おカネってなに?」をテーマとし7月14日(土)開催しました。

「実体経済と金融経済の経済規模が100倍あること」「債権債務者と無関係の債務保証の金融派生商品CDSがリーマンショックの原因とされるほど大きな影響をもつこと」、そして「金融市場のマネーが不動産やITバブルを生み、それが原油や穀物へ移ったことで国際市場価格が高騰、実体経済に大きく影響したこと」、またそれは「銀行預金や年金等、私たちのおカネが原資となっていること」をこれまでの回で確認しました。そんな私たちが普段何気なく使っている「おカネ」について、この回で改めて考えてみました。 お金の価値の裏付けになっているものは何か お金 お金は次の3機能を持っています。
@価値の保蔵(奈良時代、お米が通貨でしたが腐敗等の心配がありました)
A交換の媒介(物々交換で必要な時に必要な物を手に入れるのは大変)
B価値の尺度(野菜と貴金属等、物の価格で価値を図ります)。

昔のお金には、江戸時代の小判のようにお金そのものが貴金属であるものや、貴金属等の引換券(兌換券)であるものがありました。昭和初期の日本銀行券には「この10円紙幣を10円金貨と引き換えられます」と書かれていました。

現在の紙幣は何とも引換えられず法律でお金として通用することが決められています(信用紙幣)。 信用紙幣では、紙幣の量と引き換えられるだけの貴金属を銀行が準備しておく必要がなく、お金の発行量に物理的な制約がありません。

 

銀行はお金を創る権利を持っている

貨幣の種類とそれぞれの割合
『経済学入門塾』より

民間銀行が会社や個人に貸し出す元手とするお金は、預金者から預け入れられたお金の他に、中央銀行である日本銀行から借りているものがあります。日本銀行は銀行への貸出利率を上下させ民間銀行がお金を借りやすく又は借りにくくし、民間銀行手持ちの元手のお金の量を調節しています。

民間銀行はこの元手のお金の一定割合を準備金として手元に残し、残りを貸し出すことができます。この貸出の際にお金(預金通貨)が創られます。これを「信用創造」といい、手元に残しておくお金の割合を「法定準備率」といいます。

「信用創造」とは、例えばAさんが300万円預金したとき銀行の預金残高は300万円です。この300万円のうち200万円を銀行はBさんに貸出します。この時点で銀行の預金残高はAさん口座の300万円プラスBさん口座の200万円、合計500万円になっています。つまり銀行はお金を貸出すことで、お金を創ることができます。銀行は日銀と異なり日本銀行券を発行する権利はありませんが、預金通貨を創る権利が与えられているのです。

民間銀行が創るお金である預金通貨の量は、日本銀行が発行するお金の約16倍、現金が全体の約6%で70兆円です。

 

利子がマイナスのお金 銀行にとって貸倒引当金準備や経費回収のために、利子や手数料は必要と考えられます。また民間の普通銀行は営利を目的とする株式会社で、ここから収益を得ています。一方で利率が高率であると、資産を持たない人(借り手)から持つ人(預金者)へお金が流れ、格差が拡大します。


セルジオ・ゲゼル

セルジオ・ゲゼル

1930年代の大恐慌の時代に「物と同じようにお金も時間とともに価値を減らしていかなければならない」と考えたシルビオ・ゲゼルという実業家がいました。大恐慌時、この思想に基づくマイナス利子のお金(地域通貨または補完通貨)が世界のあちこちで出現し、オーストリア・ヴェルグルでは、公共工事の賃金支払いに地域通貨が使用されました。
マイナス利子のお金は貯めておくと値打ちが下がるため、貯めこまれずに地域内を循環し経済活動が活発になりました。深刻な経済状況だったヴェルグルは地域通貨を使い失業率ほぼ0%を達成しましたが、地域通貨は大恐慌の終焉とともにその多くが姿を消していきました。

 

銀行の役割 銀行にはお金を“循環”させる大切な機能があります。日銀ウェブサイトに都道府県別預金・貸出金データがあり「○○県でどれだけ預金されたか」と「○○県でどれだけ貸し出されたか」、地域で集めたお金を、どれだけその地域に貸出しているかが分かります。2012年4月のデータを見ると、東京都は“東京都内の預金”の2倍のお金が“東京都内に貸出金”として融資されている一方、それ以外全ての都道府県は100%以下です。銀行を介し、他地域から東京に一極集中でお金が流れています。奈良・和歌山県は約50%であり、両県で預けたお金の半分が東京に流れています。両県に限らず地方のお金が都市へ流出し、地方で循環できるお金がますます減っています。

金融機関にはどういった種類があるのでしょうか。普通銀行や地方銀行は、銀行法で規定される営利目的の株式会社で、あらゆる企業と個人が取引対象となります。営利目的の会社なので、投融資に有利な儲かる地域へとお金が移動します。


地域金融機関

信用金庫・信用組合・労働金庫など、地域金融機関は協同組織であり、そもそもの目的が相互扶助・非営利です。信用金庫は信用金庫法によって貸出対象・地域が限定されており、大企業への融資はできません。「地域で集めた資金を地域の中小企業と個人に還元することにより、地域社会の発展に寄与する」という信用金庫の目的があるからです。(ただし、投資信託販売や銀行並みの業務拡大を目指す信金もあり、現在は全て同じ性格とも言えない。) 労働金庫は労働者のための銀行で、労働者から集めたお金を労働者に融資する、個人向けのローン中心で運営されています。

 

コミュニティ開発金融機関(CDFI) アメリカ黒人居住区は、銀行から融資対象とされず貧困に陥っていました(レッドライニング)。1994年クリントン政権が法的に位置づけた結果、CDFIと呼ばれるコミュニティ開発金融機関が多くできました。これは低所得者層や地域への投融資を目的とした金融機関で、CDFIの融資で低所得者層のコミュニティの再興や雇用創出につながっています。


コミュニティ開発金融機関

CDFIは日本でいうとNPOバンクにあたりますが、日本のNPOバンク12団体に対し米国CDFIは1,200を超えています。これは、アメリカ政府がCRA法(地域再投資法)やCDFIファンド(地域開発金融機関基金)といった政策的支援をしており、資金がCDFIに集まるように、アメ(銀行補助金制度・投資減税制度)とムチ(CRA法)の仕組みを作っているからです。

その一方、日本ではNPOバンクはその多くが消費者金融と同じ貸金業法で規制されており、両政府のコミュニティバンクへの支援体制に大きく違いがあります。現在、民主党の鳩山政権時に謳われた”新しい公共”という考えにより、制度の見直しや連携の促進等が少しづつ進められています。

 

どこにお金を預けるか

どこに預けるか

私たちが当たり前に使っているおカネには、世の中を変える動きがあります。
私たちの預けたおカネが知らぬ間に、投機の資金として実体経済に影響を与え、私たちの暮らしに跳ね返っています。

私たちは、自分のおカネの預け先は自分で決めることができます。
たとえ少額でも、できることから始めてみませんか。

2012.11/報告 : 弓中夏子 武田かおり
(NPO法人 AMネット)

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