APECモニターNGOネットワーク 連続セミナー
共催:世界水フォーラム市民ネットワーク
「水に学び、水と生きる」
--- 「自由化」と水について考える連続講座緒 Vol.2 農業の基本は水 ---
2002年2月6日(水)19:00〜21:00
講 師: 三野 徹さん (京都大学大学院 農学研究科教授、水環境工学研究室)
“農業用水の食料生産機能と多面的機能を発揮させるためには、農家と地域住民が一体となって新たな「共」を組織し、地域、流域、都市との連係を深めていく必要があるし、世界的な水に対する考え方とも無関係ではありません。”
会 場:エル大阪 5階 研修室2
(京阪電車・地下鉄谷町線「天満橋駅」から西へ300m(06-6942-0001))
参加費:AMネット・世界水フォーラム市民ネットワーク会員・無料 その他500円
■農業用水の「多面的機能」
国の高度成長を経て、農村地域において都市化・混住化が進み、非農家が多数を占める農村へと変貌する中で、「水」「農業用水」を中心にしたコミュニティ、絆、意識が弱まっていきました。
もともと農業用水は、農産物を生産する機能だけでなく、水遊びや炊事、洗い場、また防火や消雪といった農村の生活の面や、生態系、潤いのある景観といった自然環境の面にも役に立っています。その意味で農村地域の非農家を含んだ多様な住民、地域住民も、農業用水を“地域の水”“みんなの水”としてとらえ、地域全体としての水利用のあり方、管理を考えていくことが必要です。
■「流域」を介してつながる農村と都市水というのは森、山、川、水路、田んぼ、地下水によってつながっているので、ポイントだけの管理ではなく、流域を一体的にとらえていく考え方、対応、「流域全体として体系的な管理」が重要となります。都市住民も、水道水がどこから来て、どの流域・水系に属するのか、是非関心を持ってほしいです。
■農村における「共」と「協」の再生が重要
農村の近代化は農家の自立をもたらす一方で、農村集落に伝統できに継承されてきた共同の「共」、協力の「協」の機能を分解し、一部は農家の「私」、残りが行政による「公」が担うことになりました。農地は私有地であるけれども、農地や農用地空間は重要な多面的・公益的機能を持つといえます。農業用水は、集落や地域、あるいは上流と下流の「共」や「協」抜きに維持できません。
「土地改良区」(*)は水利権や体系化された水利設備・施設などの社会的な水利資産をもっています。いままでの組織、技術的なノウハウを活かし、農業用水の管理だけでなく、地域の健全な水循環のために行政と住民の間に立って地域の水を管理する核として「共」の仕組みを作ることができるでしょう。「私」と「公」の間にあって,両者をつなぐ「共」の再生を農家と地域住民が一体となって進めることがきわめて重要です。
■アジアの水利用とフルコストプライシング
「水」は公共財としてその配分や管理に政府が介入するために、水の利用効率が悪くなっているという議論から、「水に値段を付け(フルコストプライシング)、市場に私権開放(市場化、自由化)した方が効率化につながり、またコストメカニズムにより無駄な水利用が押さえられて地球環境にもよい」という意見が出ています。
しかし、アジアの水は水田用が多く、多面的機能や循環的な利用をしていて、簡単に市場へ開放したり、コストメカニズムを働かしたりするわけにはいきません。
水はそれぞれの国、地域のよって歴史的背景、社会的環境、需給状況が違うため、グローバルスタンダード(世界標準)を進めるのは大混乱となる事態も予想されます。水をめぐって世界は対立する構図ができつつあり、第3回世界水フォーラム(*)でも大きなテーマとなるでしょう。
(「新・田舎人」平成13年10月 第29号 インタビューより)
※土地改良区:「土地改良区法」によって定められた農業者の団体。農地や農業用水を整備し、ため池や用水路などの土地改良設備。施設を維持、管理するために設立され、全国に約7千の土地改良区がある。
※第3回世界水フォーラム:2003年3月に京都・滋賀・大阪の琵琶湖・淀川で結ばれた流域で開かれる世界の水問題を考える国際会議。世界の人々の水問題に対する意識を高めることを目指し、フォーラム、閣僚級国際会議、水に関するフェアなどが催される。
******************** お問い合わせ ***************************
■APECモニターNGOネットワーク(AMネット)事務局
TEL&FAX:06-4800-0888 (火曜、金曜日 午後13時〜17時)
メールアドレス:apec-ngo@mxa.mesh.ne.jp
URL:http://www1.mesh.ne.jp/~apec-ngo
■世界水フォーラム市民ネットワーク(People’s Forum on Water)
TEL&FAX:075-381-7848 (月、水、金曜日 午後13〜17時)
メールアドレス:water_ngo@yahoo.co.jp